月曜日のレッスンで、fill someone’s shoes、have big shoes to fillという慣用表現をご紹介しました。今回は、最近目にしたshoeつながりの慣用表現をもうひとつご紹介しましょう。
こちらです。
wait for the other shoe to drop
もう一方の靴が落ちるの待つ? どういう意味でしょう。
むかしむかしのニューヨーク。シカゴでもよいです。下町の、低所得者向けの集合住宅に、あなたは暮らしています。夜は電気代がもったいないので晩ご飯を食べたらさっさと寝床に入ります。
深更。隣あるいは上階の住人が帰宅しました。なにしろ安普請です。扉の開け閉め、床を踏み鳴らす足音、生活音はすべて聞こえてきます。コツコツと歩いてベッドまで来ると、ドサッと腰掛けて、ガサガサゴトン。
このゴトンというのは重いワークブーツを脱いで床に落とす音です。あなたは寝床のなかで聞き耳を立てます。だって、このゴトンはもう一度聞こえてくるはずですから。
あなたはいま、「もう一方の靴が落ちる音を待って」いるのです。
これがwait for the other shoe to dropの誕生秘話(?)です。転じて、「近いうちに必ず起こるであろうことを息を詰めて待つ」ことを意味します。
The Free Dictionaryの定義を見てみましょう。
To wait for the next, seemingly unavoidable (and typically negative) thing to happen.
どうやら避けられそうにない(通常はネガティブな)次の展開を待つ。
「通常はネガティブな」次の展開ということで、辞書によっては、「次に起こることを不安な気持ちで待つ」と定義していることもあります。
ウェブで例文を検索していたら、こんなものを見つけました。ニューヨークタイムズ紙の記事のタイトルです。
Always Waiting for the Other Shoe to Drop? Here’s How to Quit Worrying
後ろのセンテンスに注目してください。「心配するのをやめる方法を提案します」とあります。つまり、前のセンテンスには「不安・心配」という単語はありませんが、wait for the other shoe to dropというイディオム自体に「何かネガティブなことを予見する」という含意のあることが分かります。前のセンテンスで、「いつもいつも、何か良くないことが起こるかも、と心配していませんか?」と問いかけ、「心配するのをやめる方法がありますよ」と提案しているわけです。
例文をひとつ。私の最近の実体験に基づいています。
My laptop started making a buzzing noise. I’m waiting for the other shoe to drop.
「ラップトップがブーンっていう音を立てはじめたよ。なんか嫌な予感。(冷却ファンがイカレる前兆だね)。」
私のPCに関して言えば、もう一方の靴は予期した通りに落ちました。冷却ファンがぶっ壊れて、起動すらしなくなったのです。「むりやり起動すると、もっとたいへんなことになるかもよ」っていう警告付きでした。え。三つ目の靴? 出張修理の長期保険に入っていたので事なきを得ましたけど!
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